【レポート】160年の時を繋ぐ友情の象徴――ドキュメンタリー上映会『Forging Bonds』
2026年4月14日、春の柔らかな夜気の中、日比谷図書文化館の大ホールにて、ある特別なドキュメンタリー映画が上映されました。タイトルは『Forging Bonds: The Samurai Armour Restoration』。
本作が描き出すのは、幕末の「文久遣欧使節団」がマルタに贈った侍甲冑が、長い時を経て日本の職人の手により蘇り、昨年の2025大阪・関西万博で喝采を浴びるまでの軌跡です。
今回は映画の一般公開に先駆けて、日本マルタ両国の関係者に向けて開催された上映会です。弊社も参加することができたので、その模様をご紹介いたします。

湿気に耐え、守り抜かれた「友好の証」
物語の起点となるのは160年前。福沢諭吉らも名を連ねた使節団が、当時イギリス領だったマルタに寄港し、友好の証として一領の甲冑を献上しました。しかし、第二次世界大戦の戦火を避けるための移動中、甲冑は湿気による大きな損傷を受けてしまいます。
長年、修復の目処が立たぬまま眠っていたこの遺産に、光を当てたのがアンドレ・スピテリ氏でした。かつて学生としてこの甲冑の存在を知り、その美しさと歴史に魅了された彼は、後に駐日大使として着任。自らの足で京都の職人を訪ね、文化保存機関「ヘリテージ・マルタ」を動かし、官民一体となった修復プロジェクトを始動させたのです。

マルタ共和国特命全権大使アンドレ・スピテリ氏
京都の技とマルタの情熱が融合する瞬間
映画では、欠損した部材を一つひとつ現代の技術と伝統の技で再創造していく様子が克明に記録されていました。困難な修復作業を支えたのは、大使の言葉を借りれば「情熱、愛情、そして忍耐」。
昨年の大阪万博マルタ館で、その威風堂々とした姿が披露された際、多くの来場者が足を止め、その輝きに見入っていた光景が記憶に新しい方も多いでしょう。

復元された甲冑(右) 左はマルタ騎士の甲冑
大使の最後の大仕事、そして未来へ
スピテリ大使は、今回の映画制作においても中心的役割を果たしています。
しかしスピテリ大使は、この上映会を最後の一大プロジェクトとして、任期満了に伴い日本を離れます。舞台挨拶に立った大使は、「この甲冑は、日本とマルタの友情の象徴であり、私たちが未来へと繋ぐべき絆の結晶です」と、穏やかな、しかし力強い声で語りました。
会場には、プロジェクトを共に歩んだ関係者や文化を愛する人々が集い、上映後には温かな拍手が鳴り止みませんでした。大使の退任という一抹の寂しさはあるものの、修復された甲冑が放つ輝きは、両国の絆がこれからも色褪せないことを確信させてくれるものでした。

文化の力で世界を繋ぐ。その重みを改めて実感した、忘れられない一夜となりました。

上映会に参加した日本とマルタの関係者たち
上映会概要
作品名: 『Forging Bonds: The Samurai Armour Restoration』
開催日: 2026年4月14日
会場: 日比谷図書文化館 大ホール