取材報告 宮城県山元町ボランティア団体「結の会3.11」

「結の会3.11」のみなさん(2019年6月訪問)

日本中に甚大な被害をもたらした東日本大震災は、発生から今年で8年が経過した。被災した多くの都市が景観を取り戻し、一見すると着実に復興しているように思われるだろう。しかしながらその多くが主要な大都市であり、津波の被害があった海沿いの街や、放射能反応の数値が高まった地域では、現在もその爪痕が生々しく残っている。

こうした現状に対し、地域の力で克服しようとする活動が東北各地で生まれている。そのひとつが、宮城県山元町を中心に活動するボランティア団体「結の会3.11」だ。2012年に設立された同会は、未来ある子どもたちを放射能被害から守るために住民主導での活動に取り組んでいる。とくに2014年から始めた甲状腺のエコー検査は、放射線による甲状腺ガンの発症を不安に感じる地域の人々から、大きな信頼を寄せられている。検査は無料で、事前の募集には毎回定員35人を超える応募があるという。

こうした活動を支えているのが、ボランティアスタッフ手作りの革靴ストラップだ。会の活動に関心を持ってくれた国内の革製品工房から端材を提供してもらい、一つ一つ完全手作業で製作している。1日当たりの生産数は30個前後だが、この売上によってエコー検査装置の購入資金の一部がまかなわれたそうで、現在も活動する上で重要な資金源となっている。

「私たちの活動は多くの人の協力によって作られています。革靴ストラップも、革を譲ってくれる人や、型抜きしてくれる人の力が無ければ製作できません。検査装置の購入資金が用意できるまで7年がかかりましたが、この期間を支えて下さった方々には感謝しかありません」

しかし、山元町とその周囲一帯を取り巻く環境は、依然として厳しい。町内の坂元地区は津波による浸水被害が激しく、大部分の建物が建て替えや修繕を余儀なくされた。JR福島常磐線も2016年にようやく復旧し、最寄り駅の坂元駅も昨年に駅舎が完成したばかりだ。また地元の農産物については、提携関係にある公共の検査機関に持ち込むことで、無料で即時検査をしてくれるそうだが、その中には自分たちが食べる分も含まれているという。公共のサポートには感謝しつつも、自らの手で作った農産物に対して信頼が置けない状況は、住民にとって大きな負担である。現在、住民の数は約1万人。震災前の1万6千人を取り戻すには、まだまだ道半ばだ。

再建された坂元駅(JR常磐線)

それでも、「結の会3.11」の努力は、地道な活動のもとにしっかり根を広げ続けている。

「私たちの活動を知った方々が、ボランティアでお手伝いに来て下さって、その方々が地元に戻って私たちのことを伝えてくれて、革靴ストラップを購入してくれて・・・という形で、つながりが生まれています。遠く広島のPTAの皆さんが900個も買ってくれたり、ドイツのデュッセルドルフにもお送りしたこともありますね。こうしたみなさんの温かい応援のおかげで、今までやってくることができました」

革靴ストラップ

当面は、子どもたちが山元町で安心して暮らすことができる環境づくりに尽力し、ゆくゆくは離れていった人々にも戻って来てもらいたいと考えている。

完全な復興への道のりは簡単ではないが、人と人とのつながりを大切に、一歩一歩着実に前へ進む「結の会3.11」。彼らをはじめとする東北の人々を、これからも応援していきたい。

 

 

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