- JEPAA Member
- Calligraphy
- Jyukei Niiro
- 書道
- 新納寿逕
© 2024 Jyukei Niiro.
SCROLL
Portfolio /作品一覧
view more
Special Interview /特別対談
母の思い出と師匠の指導を胸に、情感豊かな筆跡を表す
ゲルマー・トモコ(以下 ゲルマー):華如桃李はド イツで何度か拝見させていただいております。改めて 作品についてお伺いできますでしょうか?
新納寿逕(以下 新納):私は花をはじめ、自然が大好 きでして。日本の花といえば桜ですけれど、中国では 桃とか李になるようでして。それでこの句語を見たと きにときめいてしまいまして、ぜひこの言葉を書いて みたいと思ったんです。しかし書いてみてもうまくいかなくて、ずいぶん書き直しましたね。画仙紙を300 枚くらいは使いました。
ゲルマー:300ですか。すごい数ですね。
新納:それでもなかなか思うようなものができないん ですよ。書いた時と壁に掛けた時とで見え方が変わる のでそれを繰り返しながら書いてきましたよ。
ゲルマー:実はJEPAA 協力アーティストのミハエ ル・スチューデントさんも先生の作品が大好きなんで す。言葉の意味を知らない時から新納先生の作品は華 やかだとずっと言っていました。
新納:海外の、それも他ジャンルの芸術家の方にそう いって頂けるのは光栄の至りです。
ゲルマー:ドイツでは、たくさんの方が先生の作品を 見て感激されていました。涙を流しながら感動してい らっしゃる方もいて、言葉を超えるのが芸術なのだと 改めて感じさせていただきました。
新納:大変恐縮です。
ゲルマー:先生はご自身の句やお母様の句を作品にさ れることも多いとお伺いしておりますが。
新納:そうですね。師匠の手島右卿先生は「本当に感動したものが作品になる」とか、「感動したものがある から作品に魂が入る」といった言葉を常々仰っておら れたんですね。それで、母の句集をよく開いておりま した。母はよく私と過ごしている時のことを詠んでい たので、読み返しているととても温かい気持ちになる んです。
ゲルマー:そうでしたか。先生の書はどれも情景が浮かんだり、温かい気持ちになるので、詩や歌の意味を 線で表す力があるように思えます。 新納:手島先生の教えのおかげです。手島先生が墨は 黒一色だけど一色ではないと。若い時はただ一生懸命 に字を書いておりましたが、やっとその字が持つ意味 を意識できるようになったと思います。
ゲルマー:手島先生を心から尊敬されていらっしゃっ たのですね。
新納:それはもちろん。先生の表す字の意味の深さに いつも感銘を受けておりました。あまり口数の多い先 生ではなく、初めて話をしたのは入門して10年くらい 後のことです。私は学生の頃から先生のもとで教わっ ておりましたが、先生が書いている時の筆遣いを必死 に見て真似しようとしていました。
ゲルマー:手島先生からはどんなご指導を受けていた のでしょうか? 新納:先生の書かれた古典の臨書を手本とし、稽古日に添削していただくのですが、先生は直接良し悪しの 説明はされませんので、◯印の大きさや◯印の箇所か ら自分で判断するわけです。稽古時の先生の手指の動 きをしっかりと見つめ、用筆法、技法を学び取るわけ ですね。
ゲルマー:なるほど。ドイツにも多くの著名な音楽の 教育者がいますが、やはり素晴らしい教育者は生徒に 考える時間を与えるように思います。
新納:おっしゃる通りだと思います。中でも古典の臨 書は厳しかったです。しかしこの作品のような創作作 品はどなたにもお手本は一切書かれませんでした。そ れぞれの人の個性を尊重し、自分で考え、生かすよう にとのご配慮だったかと思います。でも先生に見てい ただく時はいつも冷や汗をかきながら通っておりまし た。
ゲルマー:手島先生の書に対する姿勢や書き方を間近 で見られたのは特別な経験でしたね。
新納:はい。「何も仰らなくても語っているんだよ」と よく先輩のお弟子さんに言われておりました。それを 感じられるようになるまで時間がかかりましたね。そ して先生がおっしゃられる一言一言にいつも勉強させ て頂いて。なんとか身にしなければと思っておりまし た。ただ、それを実感できていると感じられるように なったのは今だからこそなんですよね。当時は字を書 くことに必死でした。
ゲルマー:しかしそれを超えて今があるということですよね。
新納:そうですね、今にしてみると本当にありがたいことですね。ただただ手島先生には感謝しておりま す。もうお亡くなりになられてしまいましたが、叶う ならもう一度作品を見て頂きたいなといつも思いま す。ご指導を受けられてとても幸せでした。
(2023年特別対談 新納寿逕×ゲルマー・トモコ)
Expressing emotions in handwriting, guided by a mother’s memory and a mentor’s wisdom
Tomoko Germar: I saw your piece “Beauty like peach and plum blossoms” several times in Germany. Could you tell us more about that piece?
Jyukei Niiro: Well, I love flowers and nature. In Japan, cherry blossoms are the most popular flower, but in China, it’s peach and plum blossoms. When I saw this idiom, I found it so exciting that I wanted to try writing it. However, it didn’t turn out well, so I had to try and try again. I used about 300 sheets of Japanese calligraphy paper.
Germar: 300? That’s a huge number.
Niiro: Even so, I didn’t come out as I wanted. The impression of a hanging scroll changes when it is finished and when it is hung on the wall, so I have been writing it over and over again.
Germar: Actually, Michael Student, a JEPAA partner artist, also loves your work. He has always described your work as gorgeous, before he even knew the meaning of the phrases.
Niiro: I’m so honored that an overseas artist from other genre gives me such compliments about my art. Germar: In Germany, so many people were moved when they saw your work. Some of them were moved to tears, which reminded me once again that art is something that transcends any language.
Niiro: I’m profoundly grateful.
Germar: I heard that you often create pieces based on your own and your mother’s haiku poetry.
Niiro: Yes, that’s right. My teacher, Yukei Teshima, always said, “Whatever really moves you will take shape as your work” or “If you are really moved, you can put your soul into your work.” So I often opened up my mother’s collection of haiku poetry. She used to write about the time she spent with me, and so when I read them back, I feel her great warmth.
Germar: Oh, I see. All of your works bring back memories or give warm feelings. It seems to me that you have the ability to express the meaning of a poem or a song with the lines of calligraphy.
Niiro: I owe this to my teacher, Yukei Teshima. I thank him for his guidance. He told me that Japanese sumi ink might be black, but it’s not just a single shade of black. When I was young, I was just writing all the letters diligently, but now I finally became aware of the meaning of those letters.
Germar: You really respected Mr. Teshima, didn’t you?
Niiro: Yes, of course. I was always impressed by the profound meaning his letter holds. He was not a very talkative person, and the first time I actually talked with him was about 10 years after I started studying under him. I’d been studying under him since my student days, and I’ve always tried very hard to copy his brush strokes when writing.
Germar: What kind of instruction did you receive from Mr. Teshima?
Niiro: I write from a copy of his handwriting as an exemplar, and then he corrects it in the lesson, but he never directly explains what is good or bad. So I have to make my own judgments based on the size and the placement of his correction marks. I need to learn the brushwork and technique by observing the movement of his hands and fingers during lessons.
Germar: I see. There are many famous music
(2023 Special Dialogue: Jyukei Niiro × Tomoko Germer)
Solo Exhibition /個展
特設個展ブースin 日欧宮殿芸術祭2021
会期:2021年6月4日~6日
会場:シャルロッテンブルク宮殿(ドイツ・ベルリン)
主催:一般社団法人 日欧宮殿芸術協会
運営:クリエイト・アイエムエス株式会社
Solo Exhibition in Japan-Europe Palace Art Festival 2021
Dates: June 4-6, 2021
Venue: Charlottenburg Palace, Berlin, Germany
Organizer: Japan-Europe Palace Art Association
Operated by: Create IMS Co.
Profile /経歴
新納寿逕 Jukei Niiro
1941年 神奈川県出身
横須賀書道連盟
師:手島右卿 上松一条
作品出展国遍歴(JEPAA関連事業):ドイツ、マルタ、ベルギー、カナダ他
Born: 1941 Kanagawa, Japan
Affiliated Group:YOKOSUKA SHO federation
Master: Yūkei Teshima, Shinzan Kamijo
Exhibition of Works(JEPAA): Germany, Malta, Belgium, Canada…