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対談記事

2025年特別対談 公庄弘子×エリック・デュバリ

日常から生まれるかたちを描く、自由な表現者のまなざし

公庄弘子(以下 公庄):公庄弘子と申します。福知山市から参りました。40年ほど京都に住んでいます。福知山盆地という地域で、福知山音頭が有名なところです。福知山城があり、明智光秀にゆかりのある城としても知られています。

ゲルマー・トモコ(以下 ゲルマー):遠方からありがとうございます。土地の話を伺うだけでも、先生の作品にある独特の空気感とどこかつながっているように感じます。さっそくですが、こちらの作品についてお話を伺ってもよろしいでしょうか。ひと目見ただけで忘れられない、とても強い個性があります。

男と女

公庄:ありがとうございます。こういう表現しかできない、というのが正直なところです。作風はずっとこのような感じですね。これまでは女性を描くことが多かったのですが、この作品では男女を描きました。特別に考えたわけではなく、自由に描いていった結果、男女を描くところに自然と行き着いたんです。男と女がいて、人間はつながり、発展していく。あとから振り返ると、そこまで考えが及んでいたのかもしれません。

ゲルマー:なるほど。意図して決めるというより、描く行為そのものが思考を導いていくのですね。一度見たら強く印象に残る理由がよくわかります。

公庄:私は、きれいに描くことがあまり得意ではないので、作品は一気に描いてしまいます。輪郭を描いて、色を置いていく。仕上げの時間は少し取りますが、基本的には一筆書きのような感覚です。それと花が好きなので、どこかに必ず花が入ります。人と花が好きなんです。

ゲルマー:確かに、人物と花がとても印象的です。色彩も非常に豊かで、画面全体が生き生きしていますね。

公庄:ありがとうございます。でも描くときは、本当に深く考えないんですよ。スケジュールを立てて制作するのも苦手なので、思いついたとき、描きたいときに描くようにしています。

ゲルマー:その自由さが、作品になって現れていますね。これまで私たちの展覧会では、平面だけでなく立体作品も出品してくださいましたが、どちらもとても自由で、公庄先生らしさを感じます。

公庄:好き勝手にやっているだけですよ。子どもの頃、あまり土いじりができなかった反動もあるのかもしれません。教師になってから「土心会」というグループに入り、陶芸を始めましたが、そこはいわゆる「きれいな壺や皿」を作ることを目的とした集まりでした。それがどうしても私には合わなくて、叱られることも多く、続きませんでした。

ゲルマー:それでも制作をやめず、形を変えながら続けてこられたことが、本当に素晴らしいですよ。こちらの絵のシリーズは、何点ほど制作されているのでしょうか。

公庄:実は、そんなに多くないんです。描くのは早いのですが、作品数はとても少ないですね。

ゲルマー:そうでしたか。

公庄:私は母の介護を長くしていたんです。教師を少し早めに退職してから、16年間、母の世話をしていました。その間は、制作どころではありませんでしたね。ただ、母は水墨をやっていたので、小さい頃から書や絵を見る環境には恵まれていたと思います。

ゲルマー:大変なことだったでしょうけど、今も先生がこうして描かれていることが素晴らしいです。構図もとても独創的ですし、何よりテーマにはユーモアがあります。

公庄:テーマは、やはり身の回りのことから生まれます。家庭のこと、主婦としての日常、そうしたものが着想になります。

ゲルマー:近年の創作活動の中で、特に印象に残っている出来事はありますか。

公庄:長年、いろいろな役割に縛られてきた状態から解放されたことですね。教師としての責任、母の介護。ずっと忙しさの中にいるような気がしていました。それが一段落して、久しぶりに絵を描いてみたら、とても気持ちが晴れやかになったんです。あらためて振り返ると、育った環境は意外と自由だったのかもしれません。父を早くに亡くし、母は働きに出て、妹は預けられることも多かった。一人で過ごす時間が長く、拘束される感覚が少なかったように思います。こうして質問されると、忘れていた記憶がふと蘇るのが不思議ですね。

ゲルマー:お話を伺っていると、「自由」という言葉が、先生の人生と制作の両方に貫いているように感じます。決して派手に主張されるわけではないのに、その感覚が作品の中に確かに息づいていると思います。シンプルな構成でありながら、表情がとても豊かですよね。見れば見るほど、人物の感情や関係性が浮かび上がってくるように感じます。

公庄:そうなんですかね。私はずっと自分のことを内向的な人間だと思っていました。でも最近になって、もしかしたら違うのかもしれないと思うようになりました。それが絵に表れているのかもしれません。

ゲルマー:なるほど。それはとても興味深いですね。内向的だと思っていたご自身の中に、実は外へ向かうエネルギーや、他者とつながろうとする力があった。その気づきが、人物の表情や色の使い方に自然と現れているように感じます。特に、先生の作品では「青」が印象的です。落ち着きがありながら、同時に強さや深さも感じさせる色ですね。

公庄:青を使おうと意識しているわけではなくて、もう感覚ですね。勢いで描いてしまいますから。

ゲルマー:そこが本当に魅力的だと思います。計算された青ではなく、身体の感覚として選ばれた青だからこそ、見る側の感情にもまっすぐ届くのだと思います。以前先生の作品をマルタで展示した際、この作品は非常に人気がありました。多くの方が足を止めて、何度も見返していましたよ。言葉は通じなくても、色や人物の関係性から、何かを感じ取っている様子がとても印象的でした。

公庄:そう聞くと出してよかったって思います。私は描くのは早いんですが、多作ではありません。気持ちが乗ったときに、一気に描きたいんです。そのために、日々イメージを溜めているような感覚はありますね。ただ、描く瞬間は何も考えていません。

ゲルマー:その「溜めて、手放す」感覚、とてもよくわかります。準備はしているけれど、いざ始まったら理屈は手放す。そのバランスが、作品に独特の生命感を与えているのだと思います。

公庄:ありがとうございます。そういえば以前作品がドイツに行ったのはとても嬉しかったですね。理由は自分でもよくわからないのですが、ドイツにとても魅力を感じます。

ゲルマー:またぜひドイツにも来てください。ドイツは、夏と冬で日照時間がまったく違います。夏は夜の十一時頃まで明るいこともありますが、冬は夕方四時には日が沈んでしまう。そのため、冬の間は気持ちが沈みがちになる人も多く、家の中を明るい色や装飾で彩る文化があります。そうした環境で暮らす人々にとって、先生の作品は、まさに空間を明るくし、心を持ち上げてくれる存在だと思います。

公庄:そう言っていただけると、とても嬉しいですね。

ゲルマー:先生の作品に共通して感じるのは、「人」と「花」が常に寄り添って描かれていることです。花はどのように選ばれているのでしょうか。象徴的な意味を考えて選ばれるのか、それとももっと日常的な感覚なのでしょうか。

公庄:身近な植物ですね。例えばこの作品では紫陽花です。家の庭には季節ごとにいろいろな花が咲くので、何を描こうと決めるより、描き終わったあとに「あ、これが描かれていたな」と気づく感じです。最近は、意識的に男性も絵の中に現れるようになりました。これまではほとんどなかったのですが、これからは男女を描くことが増えるかもしれません。

ゲルマー:それはとても大きな変化ですね。無意識から始まった表現が、少しずつ意識の領域に現れてくる。その変化の途中に立ち会えているようで、とても興味深いです。構想を練る時間も、すでに制作の一部なのだと感じました。

公庄:始まってしまえば、一気に描けますけどね。

ゲルマー:私もフルート奏者なので、その感覚はよくわかります。何度も練習していても、本番ではほとんど何も考えていない。ただ音に身を任せている状態になります。考えないことで、かえって本質が立ち上がってくる。絵を描くことと、演奏することは、とても近いのかもしれませんね。

公庄:そうですね。きっと同じなんでしょうね。

ゲルマー:これから男性をテーマにした作品がどのように展開していくのか、とても楽しみです。これまでの自由さを保ちながら、また新しい公庄先生の世界が立ち上がってくる予感がします。本日は本当に、ありがとうございました。


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個展ブース

特設個展ブース in 日欧宮殿芸術祭2024

会期:2024年4月20日~22日
会場:シャルロッテンブルク宮殿オランジュリー(ドイツ)
主催:一般社団法人 日欧宮殿芸術協会
運営:クリエイト・アイエムエス株式会社

 


経歴

公庄弘子 Hiroko Gujo

1943年 京都府出身
作品出展国遍歴(JEPAA関連事業):ドイツ、マルタ共和国など

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