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2022年特別対談 長岡美和子×カトリン=スザンネ・シュミット

書、文学、言語・・・
文化の源を思索する至福のひととき

カトリン=スザンネ・シュミット(以下 シュミット):長岡先生とは今年の 4 月にパリでお会いして以来ですね。しかし今回の池袋展にも、素晴らしい新作をご用意していただき、ありがとうございます。早速ですがこちらの作品からお伺いしてもいいですか。

長岡美和子(以下 長岡):これは「贈」という字を書いています。英語では「gift」ですかね。貝に曽と書いて「贈」となります。今回は永井龍男の「散歩者」から選んだ一字を書きました。

シュミット:この一字書シリーズは、長岡先生が文学作品から着想を得て、浮かんだ一字を書すという独自の取り組みですね。「贈」という字は心を表すいい言葉です。

長岡:そうですね。ただ文章の中から取っているので、使われる意味合いは少し変わってくるかもしれません。私の場合は本を読んでいて、一字がふっと浮いて出てくる。それを書いているだけですけれど、見た方が感じてくれた意味でいいかなと思っています。

シュミット:よく考えましたね。出会って 10 年近く経ちますが、長岡先生の感性や取り組みの切り口は新鮮だと思います。ちなみに題材にする本は、どのようにして選んで、それをどのように作品にしていくんでしょうか。

長岡:大体 10 月末に毎年個展がありますので、それが終わった段階で次の作品に取り組むようにしております。とくに選び方のルールはありませんね。持っている本から選ぶこともあれば、古書店に行ってテーマを探すこともあります。目星をつけて本屋に足を運んでも、その時々の感情で選ぶ本は変わるので、色々手に取って読むようにしていますね。

シュミット:作品を仕上げる時は、何枚も書くのですか?

長岡:何枚も書くこともあれば数枚で満足できることもあります。自分の心に敵うものでなければ作品にはいたしません。だから本を読み込む時間の方が長いです。どの本にするか読み込みながら、やっと一字が決まります。

シュミット:この取り組みはもう何年くらいされていますか?

長岡:17 年が経ちました。元々は普通に書いていたのですが、鍛錬を続けているうちに、気づいたら文学から字を取れるようになっていました。私からも質問してよろしいですか? シュミットさんはドイツでどのような教育を受けてこられましたか。

シュミット:私は旧東ドイツの小さい町に生まれて、高等学校の校長先生の父と薬局に勤務していた母は薬局でずっと働いていました。高校までは同じ街で過ごして、大学からベルリンに行き、日本学科で 5 年間日本の言葉と文化を学びました。芸術を勉強したのも、同じ時期ですね。

長岡:日本に興味を持たれたのはなぜですか。

シュミット:日本に関心のある友人がいたのです。その友人はわびさびについて少し興味があり、私も感銘を受けたことが大きかったですね。それと言語ですね。英語もフランス語も面白かったですが、中でも日本語は面白いと思いました。

長岡:そこの国の文化を知りたいと思ったわけですね。言葉を知るというのは文化を知ることですもんね。でも大学生の頃からわびさびに関心があったというのは驚きです。日本人でもわからない人は多いですから。

シュミット:そうですね。ヨーロッパでは日本の理想的な美意識がわびさびだということを知っている方は多いですね。今はアニメとか漫画の印象の方が強いと思いますが。

長岡:日本には「教養」や「心得」という言葉があります。日本人ならこうありたい、こうあるべきというものですね。それがわびさびへと繋がっていきましたけど、絵を美しく描く、字を綺麗に書くというのは心得だったんですね。

シュミット:大学の時代に書や花を学びましたが、すごく難しくて今はやっていません。ただ日本の精神を感じる作品にはいつも惹かれます。少し違うかもしれませんが、知り合いのデザイナーが雨をザーザー、ぽつぽつといろんな種類で表現していたのを見たときにすごく感動しました。

長岡:ドイツにはそのような表現はないですか。

シュミット:ないですね。強い雨が降っているとか、弱い雨とかそういった表現です。日本語は面白いです。

長岡:ドイツと日本の人たちは気質が似ていると言われていますがシュミットさんはどう感じますか。

シュミット:確かに日本人はアジアのドイツ人という風に親しみを持って言われていた時はありましたけど、80 年代以降の若い世代はそうとも言い切れないですね。非常に多様です。国で括れないです。話を作品に戻しますが、これから制作で取り組んでみたいことはありますか。

長岡:ないですね。制作は感情でできるのでその瞬間瞬間で変わると思います。制作をする上で目標を持つということはすごく難しいですね。

シュミット:なるほど、その時どきのベストの長岡先生の作品を期待しております。今日はありがとうございました。

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