ARTIST TOP

2023年特別対談 内田百合子×ジャン・イーヴ

唯一無二の押し花芸術、
作品も思い出も色褪せることなく

ジャン・イーブ(以下 ジャン):内田先生はこれま でも何度も日本ケベック友好展にご出展くださってい ますよね。穏やかさや平和を感じる先生の作品はいつ も印象深く拝見していました。こうしてお会いできて 光栄です。

内田百合子(以下 内田):こちらこそ。本日はこう いったお時間をいただきありがとうございます。

ジャン:早速ですが、今回の池袋展にご出展の作品に ついてお伺いしてもよろしいでしょうか?

内田:これは「幼き頃の追憶」という作品です。私は 幼少期から花が大好きな子で、母にはよく「花を取る か命を取るか」と言われておりました。私の住んでい た家の近くには二つの池がありまして、ある日そこで ラーメン丼ぶりくらいの大きな睡蓮を見つけたことが あったんです。それを父や母、姉に無理と分かりなが らも「あれが欲しい」とせがんだ事がありました。

ジャン:内田先生の印象や作品からは想像できない一 面ですね。お母様の「花を取るか命を取るか」という 言葉、確かに理解できます。

内田:それから何年も経って、私は花屋をしていたの ですが、お客様が鉢植えの熱帯睡蓮を持ってきてくだ さった事があったんです。その時にこのいただいた花 はあの幼少の頃に見た花と同じだと気がついたんで す。でも何十年と花屋で働いてきましたが、あれほど 大きな熱帯睡蓮を見たことはありません。幼い時に見 た花の美しさを私は一生忘れることはないと思います。あの時の感動を形にしたいと思いこの作品を制作いたしました。

ジャン:ではこの下にある紫色の花が子どもの頃に先 生が見た熱帯睡蓮なのですね。

内田:はい。また画面を区切って池が二つある光景を 表現しております。

ジャン:とてものどかで、安らぎを感じられる作品で す。色彩も非常に豊かですがこれは染色されています よね?

内田:いえ、染色は全くしておりません。

ジャン:え?全くですが、とても美しい色合いです。

内田:だから私は作品に編んだ糸を使っております。 以前は押し花だけを使った作品を制作したおりましたが、それだと色が変わってしまい、作品の雰囲気が変わってしまった事があったんです。それでどうしたら 作品の雰囲気が変わらないだろうと考えて、次第に鮮 やかな色の糸を使うようになっていきました。それは 私のターニングポイントだったと思います。

ジャン:芸術家として個性をこの編み込んだ糸に見出 されたわけですね。

内田:はい、この糸を使うようになってから自分が進 むべき道が見えたように思います。

ジャン:そうですね。私たちも内田先生の作品には先 生だけの表現を見る事ができます。それにしても非常 に細やかで根気のいる作業かと思うのですが。

内田:それが作業は何時間でもできてしまうんです。

ジャン:すごいですね。情熱があると時間も忘れてし まいますよね。よく分かります。この作品はどれくら いで制作されたのですか。

内田:イメージを思いついてから二ヶ月半くらいで しょうか。日々制作に没頭しておりましたのでどれく らいで作ったかはあまり覚えていないんです。

ジャン:素晴らしい集中力です。ここに使われている花や草はどのように入手されるのですか。

内田:散策して、それを積み、家で乾燥させてから作 品に使います。この中央にある草は確か20年以上前の 草だと思います。よく夫が車を出してくれて色々な場 所に草花を見つけに行きました。

ジャン:20年ですか。時間が経ってもあざやかに色が 残っています。それがこのように形になるのは旦那様 にとっても誇りですね。とても協力的なお方だと想像 できます。

内田 :そうなんです。私が夜遅くまで作業をしている 時でも、黙って新聞を読みながら近くにいてくれる人 でした。

ジャン:とても素敵な旦那様ですね。

内田:来月ケベックに出品する作品には何年も前に主 人が私に贈ってくれた蘭を使っています。

ジャン :ぜひ実物を拝見できるのを楽しみにしております。押し花の作品は私もこれまで何度も見てきま したが、先生のような押し花を制作する方を私は見た 事がありません。まさに唯一無二と言えると思いま す。

内田:ありがとうございます。ただ私自身は、あくま で好きでやっているだけなんですよ。自分で好きに やったものをそのようにおっしゃっていただけて光栄 です。

ジャン:これまでもそうでしたが、来月のケベックで の展覧会では先生の作品を見た多くの人が喜んでくれ るかと思います。これからも素晴らしい作品を作り続 けてください。これからも先生の素晴らしい作品を拝 見できるのを私も楽しみにしております。

Safari未対応