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パリに魅了された女流画家、その情熱の日々に乾杯

デュバリ:中村玲子先生、私のことを覚えていますか?パリではお世話になりました。今日は東京に場所を移して、先生のお話を聞いていきたいと思います。

中村:あの時はありがとうございました。今日は、フランスで今活躍されている画家の先生とじっくりお話をできる機会がもらえるということで、とても光栄に思っています。

デュバリ:私も日本の画家の先生とお話できるということで、とても光栄です。どうぞよろしくお願いします。

中村:はい、よろしくお願いします。

デュバリ:まず伺いたいのが、中村先生はフランス、特にパリへの思い入れが深いですよね。作品でもパリの風景画を多く描かれています。よろしければ、パリが好きになったきっかけを聞かせていただけますか?

中村:率直に言いますと、私がパリに住んでいたからですね。暮らしているうちに、街の良さを肌で感じるようになって、どんどん好きになっていきました。

デュバリ:どんなきっかけで移住されたのでしょうか?

中村:私の主人が研究者だったんですが、仕事の都合でパリに長期滞在しなくてはいけなくなりまして、そこに同行させてもらいました。その頃はまだ若かったので、主人と離れるのは嫌でしたし、体力的にも精神的にも元気だったので。パリの街は日本とまったく違いましたが、すぐに気に入りました。午前中はフランス語を学び、午後は絵を描く。そんな生活を送っていましたが、飽きることはありませんでしたね。とくに街並みの美しさには感銘を受け、いろんなものを描いて回りました。

デュバリ:そんなに気に入ってもらえたなら、私も嬉しいです。現在の住まいはノルマンディーにあるのですが、パリにはよく足を運んでいます。多くの芸術家が移り住み、中村先生と同じように街中でたくさんの絵を描きました。ただ、パリに来て成功した芸術家の多くは、パリ出身よりもむしろ地方や外国にルーツを持つ人物が多いようです。やはり外国の美しい街と文化は、芸術に限らず多くの刺激をもたらしてくれるのだと思います。実際、いま私の妻と息子は、東京のいろんなところを回っていますからね(笑)。

中村:そうでしたか。エリックさんもぜひ日本を楽しんで行って下さい。

デュバリ:ありがとうございます。ところでその時に描いた絵は、どこかの展覧会に出品されたんですか?

中村:実は、描いた絵を銀座の画廊の人が本にするよう勧めてくれて、せっかくだからと画集にまとめたんです。そうしたら、画集の評判もなかなかだったんですが、それをきっかけに色々な方が興味を持ってくれるようになりまして、そうこうするうちにル・サロンに出さないかというオファーをもらったりするようになりました。

デュバリ:それは素晴らしいですね。私もパリではよく展覧会を開いているんです。やはりあそこで作品を発表する時は、特別な思いが湧きあがります。

中村:その気持ちは私も同じです。昨年もパリに出品しましたが、パリは本当に好きな街です。

デュバリ:えぇ、とくに展覧会のあったパリのマレ地区は本当に素晴らしい場所ですよね。

中村:そうですね。マレ地区はセーヌ川の河岸に面した風景が美しいですよね。私はあの対岸で描いたこともあります。

デュバリ:セーヌ川沿いの景色を描いた名画は多いですよね。

中村:良い景色が多いですから。私は、セーヌ川の夜明けをリアルタイムで描いたこともありました。時間帯によって全く違って見えますよね。その光がとても美しかったんです。

デュバリ:わかります。日本の建物と違った光の反射がありますよね。1日の時間帯によっても全然違って見えるので、同じ景色でも描く価値があると思います。

中村:そう、だから、何枚も同じ場所でたくさん描いて帰って来てしまうんです。

デュバリ:技術的なお話も伺っていいでしょうか。中村先生の描く風景には、余韻と言いますか、不思議な光がありますね。

中村:私の絵は、白いキャンバスに、まず黄色を塗っていて、その上から描いていきます。その効果かもしれませんね。

デュバリ:確かに絵の所々に黄色味を感じます。中村先生のように自分のスタイルを開発して、なおかつ確立されているのは、芸術家として素晴らしいことです。

中村:ありがとうございます。こんな描き方をするようになったのは、絵を見る方に想像を膨らませてもらえるのではないかと思ったからなんです。くっきりした輪郭でないからこそ、人間の想像力は刺激されるのではないでしょうか。

デュバリ:なるほど、確かにそのとおりですね。でも中村先生のような具象画でそういった効果を演出されるのは珍しいのではないでしょうか。

中村:他の人と違うことをしたいわけではないですが、見て下さる方のイメージとつながって完成すればいいと思っています。私からも質問なのですが、エリックさんはどんな風に絵を描いているんですか?

デュバリ:私は、幽体離脱のような状態で描きます。自然など外部の色々なものを見て感じて、自分の中に満たされた瞬間に描けるようになるんです。だからスケッチなどで定期的にたくさんの作品を描くことができません。1ヶ月以上も時間が開くこともあります。でも描く時は突然来るんです。描かなきゃ!という意思が突然降ってきて、描いている時の自分はいつもの自分と切り離されたような状態になります。まさにその瞬間の自分は、絵を描く道具になっているのだと捉えていますね。

中村:それはすごい、私や身の回りの人の絵画の向き合い方とはまったく違うんですね。ちなみにエリックさんは今回が初来日なんですか?

デュバリ:えぇ、初めてです。本当に日本は素晴らしいです。まだ帰国もしていないのに、また来たいと思っているくらいです。元々日本には清潔で勤勉な国、という印象があったのですが、しかし実際に来てみて、それを上回る素晴らしさがあることを知りました。それに、日本のアーティストは温かくて親切で素晴らしいですね。ところで中村先生は、パリ以外でも絵は描かれるのですか?

中村:はい、最初の主人の長期滞在以外でもパリに行く機会はありましたが、それ以外は日本に居りますから。描くものは、とくに縛りはありませんが、感動したものを描くようにしています。

デュバリ:やはり感動した瞬間、その自己表現は大事ですよね。

中村:そうですね。そういった意味では、初めてパリを訪れた時の感動に勝るものはないかもしれません。あの頃セーヌ川を描いていると、すぐに次の作品のイメージが湧いて来ました。こういう風にセーヌ川を描いたらどうか?とか、頭の中で溢れてくるんですよ。

デュバリ:感動は大事な言葉です。中村先生のお話を聞いていても、すぐにその時の瑞々しい気持ちが甦ってきて、私にも伝わってきます。最後になりますが、今後、取り組んでみたいことなどはありますか?

中村:とくにこれまでと違う、新しいことをやりたいとは思わないですね。描きたいという意欲がある限りは描き続けていくことが大事だと思います。

デュバリ:すでに中村先生は、人生において最高のものに出会っているのも大きいのではないでしょうか。

中村:確かにパリで私の人生は定まったのかもしれませんね。セーヌ川を描いていても、今度は反対から描いたらどうだろう?とかアイディアが膨らみます。ただそうかと思えば、日本の富士山を描きたくなったりもするんです。

デュバリ:思わぬ出会いはまだまだいくらでもあり得ます。

中村:あと大事なのは健康の維持です。健康があれば絵も描けるし、旅もできますからね。

デュバリ:そうですね、お互いに健康で、またパリで出会える日を楽しみにしています。

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